新司法試験開始後、合格者の増大による弁護士の就職難が叫ばれるようになって久しいように思います。この原稿を書いている平成26年6月時点では、(平成25年の司法試験合格者数が2049名だったことを受けて)各弁護士会で司法試験の合格者を抑制すべきであるとする会長声明が相次いで出され、単位会によっては、具体的に1000人以下にすべきとするものもあります(山口、埼玉など)。このような会長声明が相次いで出されるほど弁護士の就職難は差し迫った問題なのだと思います。加えて、こういった就職難の余波として、法科大学院の志望者も激減し、母校の先生方におかれましても愁眉の問題と捉えておられることと存じます。

就職難によってかどうかは別として、現在は、仮に司法試験に合格しても、それだけで合格後の人生が安泰であるかどうかは、疑問の余地があると言わざるを得ません。就職した事務所に依るところもあるでしょう。1年目の弁護士が受け取る平均的な給与については、毎年少しずつ減ってきているように聞きます。ロースクールを卒業し、合否や就職の不確実性が目に見えている司法試験を避け、一般企業に就職する方が、「安定」という意味でも優れた選択かもしれません。就職活動の苦労については、各人によって様々だと思いますし、就職地(実務修習地)の状況によってもかなり違う(東京・大阪は私の期の頃からものすごく大変だと聞きました)でしょうから、このコラムでは、私の事務所の特徴的な給与体系について触れたいと思います。

私が就職した事務所(私を含め弁護士3人)では、当初から「仕事は自分で取ってくるもの」と教え込まれました。ですから、弁護士会のプロボノ活動を含むいかなる活動をしても、何も口出しされたことはありません。事務所事件をやらせたいがために弁護士を雇い、個人事件を一切許さないという、新人弁護士を労働力としてしか見ない事務所もある中で、私の事務所はまさに「放牧」のような状態でした。かと言って、いわゆるノキ弁のように、事務所から給料をもらわず、仕事だけ紹介してもらうという形態でもありません。「最初から個人事業主としての自覚を持ちなさい。売上を上げるためには何をすべきか自分で考えなさい」という趣旨で教えられたのでした。

仕事は自分で取ってこいと指導される一方で、私の年間給与は、基本給(月給)の16か月分(各月+ボーナス4か月分)で、私の期としては恵まれていました。その代わり、個人で取ってきた仕事(国選含む)も全額事務所の収入にしなければなりませんでした。自分の仕事の収入が、私の年給+事務所の私の経費負担分を超えた場合には、その超えた部分が事後的に支給されました。例えば、私の給料が500万円、私の売り上げが1800万円、事務所の経費の私の負担分が600万円だとしたら、1800万-(500万+600万)=700万となり、500万円との差額200万円が事後的に支給されます。一方、私の給料が500万円、私の売り上げが1100万円、事務所の経費の私の負担分が700万円だとしたら、1100万-(500万+700万)=▲100万となり、私は経費を余計に支払わなければならないように見えますが、実際には経費を支払えということにはならず、給与がそのままもらえます。つまり、「最低給与保証付のパートナー契約」という形態です。当然のことながら、1年目は給与を超えて売上を上げることはできませんでしたが、2年目からは追加で支給を受けられる程度に個人事件を受任しました。

さて、ここで大事なのは、「いかにして自分で仕事を取ってくるか」ということです。個人事業主であることを自覚する人とそうでない人とは、自ずと仕事に取り組む姿勢が異なってきます。その姿勢とは、「仕事に真面目に取り組む」ということではありません。イソ弁として働いていても、与えらえた仕事に真面目に取り組むことに変わりないと思います。そうではなく、「今すぐ事務所から出て行ってもやっていけるかどうか」という視点で仕事に取り組めるかです。そのためには、仕事を紹介してもらえるような「結果」を残すことと、仕事を紹介してもらえるような「人柄」であることが必要かと思います。

私は、個人的には、前者については、勝つべき事件できっちり(回収面を含めて)勝つこと、負ける事件を納得して負けてもらうことだと思います。後者については、なかなか難しいですが、挨拶をする、自分から声をかける、無報酬の雑務を引き受ける等々の積み重ねではないかと思っています。

この点、最近の修習生には、後者の視点が全くない人が一部見られます。弁護士の数が少ない時代なら、それでも十分にやっていけたと思います。しかし、今は弁護士大増員かつ就職難の時代です。自分の価値を高める以外に、生き残る(という言い方は大袈裟ですが)方法はないのではないでしょうか。

在校生の皆様におかれましても、合格後を見据え、自分の価値を高めることを忘れずに勉強に励んでいただければと思います。

いわき・よしゆき
平成18年3月立命館大学法科大学院卒業(既修1期)
愛知県弁護士会所属
現在、アールイー綜合法律事務所にて弁護士として執務